不動産担保ローンの珍しい効果

そこにあえて労働条件に大きくかかわる個人の業績評価をもちこむことは、労働者の公平観にもとり、職場の人間関係をきしませるのである。 第1に、社会的な影響を視野に入れた論拠がある。
さまざまの営業マンが業績評価に拍車をかけられて売り込もうとする製品やサービスが社会的にみて真に有益なものであるか否かは、事例に則して慎重に検討されねばならない。 しかし少なくとも頻発する「悪徳商法」の背景には、かならず行きすぎた個人の業績評価がある。
たとえば危険な非加熱製剤の売り込みにしてもそうだ。 80年代前半、いま告発されている企業の医薬品情報担当者(セールスマン)の回想によれば、その営業ノルマはきつかった。
その上その個人別の達成度は社内で公表され、達成できないとみんなの前でひどく叱られ、ボーナスや昇給に大きく響いた。 そこでセールスマンは、担当する病院に入院している血友病患者の子供の状態をわざわざさぐって、止血用に大量の製剤が必要になる抜歯や整形手術を医師につよく勧めたものである。
当時すでに非加熱製剤とエイズの関係は認識されていたという。 それにもちろん、社会的にみて、労働者個人に量的な業績の達成を競わせてはならない業種や職種も広汎に存在する。
研究や教育、医療や福祉、それに安全という点から運輸などがこれに該当するだろう。 これらは比較的に公共部門の比重の高い分野であるが、公共部門の効率化や民営化とともにここにもあえて個人の業績評価を導入しようとする試みはないか、きびしいチェックが必要である。

以上を要するに、過度の個人別業績評価によってサラリーマンのモラ1ル(勤労意欲)が支配され、そこに労働のモラル(倫理)が呑み込まれる社会は、生活を保障された公務員が人びとのニーズに徹底的に鈍感でありうる旧ソ連型官僚制社会と結果的には同様に野蛮なのである。 能力主義を規制する連帯−職場社会の場合これからは日本の労働者も終身雇用に安住することはできない、その幻想をもたず社外でも通用する個人としての技能の獲得に努めなければならないー私は個人的なアドヴァイスとして、そう勧めることに異議を唱えるものではない。
また、これからは「会社人間」ではない、個性ゆたかにみずからの価値観を大切にする「21世紀型サラリーマン」たれという主張にも賛成である。 しかしながら、このようないわば〈価値意識としての個人主義〉は、いま経営者の強化しつつある能力主義管理に無批判なままの個人的対応、すなわち〈生活を守る手段としての個人主義〉によって多くの労働者のものになるだろうか?それはむつかしい。


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